運用に関する私論

 まず、巨大人型ロボットはその目標が非常に限られており、ゴジラに対する自衛隊の対応等必ずしもそれが装備されるような状況は起こり得ないと考えられるのでここでは検討から除外する。
 また、歩兵生残性向上のために開発されるPAやATといった二足歩行兵器については、そのまま歩兵として運用されるはずであるから論ずる必要も無い。

 よってここでは中型二足歩行兵器の運用のみについて検討したいと思う。

  • 施設科装備としての人型二足歩行兵器の運用

 これはつまり、フォークリフトやクレーンといったものが二足歩行ロボットに置き換わると言う事である。たとえば、戦車回収車等は二足歩行ロボットの方が効率がいいと思われる。なんせ、ひっくり返ったミニカーを元に戻すにはカブトムシの角に紐をくくりつけて引っ張らせるより指でひょいとひっくり返らせる方が効率が良いように思える。
 また、野戦築城・架橋においても有用だろう。ブルトーザー・ショベルカーといった複数の装備を、パーツ転換(バケットからスコップ)のみで行うことが可能であるし、架橋についても溝に板を渡すように簡易な作業となるだろう。

  • 機甲科装備としての運用

 戦車の主目的は敵戦車の駆逐、戦線の機動突破等である。二足歩行兵器はその機構上従来の戦車ほどの装甲を持ち得ないのではないかと考える。ただし、この面については増加装甲や盾の使用等でカバーし得るとは考えるが、私は直接照準兵器としての二足歩行兵器についてはいささか疑問を感じる。確かに、高速で移動する目標の関節等を破壊するような射撃は不可能であろうが、対戦車ミサイルや終末誘導迫撃砲弾等の従来主力戦車に対抗する為開発されてきた兵器に対してはその暴露面積が高い分不利ではないかと考える。よって、あくまでもその用途は対戦車兵器としての運用となるのではないかと思われる。*1

  • 特科装備としての運用

 戦車と違い、直接照準を受けないと言う前提で運用される特科装備としては二足歩行兵器は最適であると考えられる。また、アタッチメント交換で榴弾からロケット弾、対空機関砲/短SAMと言った使い方も可能であろう。ただし、従来の自走砲より高価となり、またその移動力にも若干の不安がある。

  • 空挺兵器としての運用

 二足歩行ロボットの最大の利点は、まさにこの点ではないかと思われる。主力戦車自走砲と言った装備は現在に至っても空挺降下が可能な兵器とはなり得ていない。対して二足歩行兵器は従来の人間用空挺装備がそのまま利用でき、なおかつ主力戦車に準じた火力を発揮する事が可能である。もちろん、輸送機等のキャパシティ増加などといった問題もあるが、少なくともATMや低圧105mm砲搭載装甲車を空挺降下させるよりも、二足歩行兵器にその兵装パックを持たせ降下させたほうが効率が良いのではないかと考えられる。

  • 森林・山岳地帯における運用

 従来の主力戦車がその機動力を発揮し得ない森林や山岳地帯への侵攻には二足歩行兵器(多脚戦車でも可)は有用であると思われる。

  • 宇宙戦における運用

 近未来の技術レベルを想定しても、宇宙は戦場とはなり得ないのではないかと考える。仮になったとしても、その目標は敵偵察衛星の撃破や宇宙ステーションの破壊と言った事になるだろうが、それは戦況に大きく寄与する物ではないと思われる。
 ただし、宇宙往還機等の実用化より低軌道よりの空挺降下阻止戦という局面は想定できるが、それはむしろ航空戦となるであろうから二足歩行兵器の登場する場は無い。

 仮に将来軌道上へのHMVマスドライバーといった安価大質量打ち上げ技術等が確立され、宇宙艦艇が装甲を持ち得たとしても、大空間内で展開される艦隊戦へ中型二足歩行兵器はおろか、艦載機など小型艇の寄与する場面も存在し得ないだろう。確かに、誘導兵器やレーダーを無力化する手法が確立したとしてもIR探査や光学探査でそれはカバーされるのではないかと考える。また、高速で移動する艦隊同士が戦闘状態に陥った場合、それは中世における馬上槍試合のようなものになるのではないかと考えられる。機雷やデブリ等で敵軌道を制限しつつ行われる戦闘。当然艦隊は一回の戦闘でその戦闘でその継戦能力を失うだろう。多星系国家規模のレベルまで人類が進歩し得ない限り宇宙は戦場とはなり得ないし、そこまで文明が進んだ場合、人類は戦争などというものを国家間の外交カードとして行使しないと信じたい。

*1:戦闘ヘリの代替としての存在となる?