夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

 通販で頼んどいたのが来まして、読む読む。
 『はだしのゲン』のように悲惨ではなくて、そこらじゅうに溢れている戦争伝書のように過激でもない。ジンワリと染み込んで来る様な、やさしい本でした。きっとこうの史代さんの作風なのでしょう。お勧めします。もっとこう、喧伝された何かではなく、もっとこう、奥底にあるものを伝えているように思うんです。
 広島の、原爆の話。悲惨ではないと言うのは、悲惨な絵がないという話で、そういう描写は他に譲ったんだろう、と言う事で、話自体はひどく悲惨な物なのです。いや、ひどくって事もないか。悲惨な話なんだけれども、悲惨ではない。良かったね、なんてはとても思えないんですが、まぁ、何というほうがいいのか。ともかく淡々としていると言うか。
 うん、従来の戦争伝記から一線を画しているのだけは間違いないでしょう。
 これは一つの転換点になりうるんではないかと思うのです。

 これ以降は無粋な話。
 えと、福井にも空襲はあったんですよ。子どもの頃、小学生の自分よく話を聞かされて。しばらくエビが喰えんかったなぁ。あと、お堀にも近づきたくなかったし。ばあちゃんにも話を聞きましたし、えぇ。
 広島の声、長崎の声。さて、福井や東京、その他大規模空襲を受けた土地の人間の声ってのはさほど影響力を持たないもんなんでしょうな。子どもを火から守りたいと生爪が剥がれるまで地面を掘り、やっと開いた小さな穴に我が子を収めその上からわが身を盾にした母親と蒸しあがった子ども。山の上から見た福井平野が真っ赤に見えた話。お堀に飛び込む人たちと、その飛び込んできた人たちに水底へと追いやられた人たちの話、そしてそこに降ってくるナパーム弾。ナパームってのは水より軽いんですよ。だからそれは水面に広がって、お堀は火の山のようだったそうで。

 戦争の原因についての追求。日本人が馬鹿だったから?当時の政権が無能だった?軍部の独走?大正年間はモボが闊歩したんですぜ?大正デモクラシーって習わんかったん?それが10年そこそこでああなったんよ?不思議に思わんのが不思議。で、考える事を制止しょうとする態度が不思議。悲惨は悲惨。しかしな、その理由は?悲惨はいや。うん、それはそれで構わんから、人が考え事するの邪魔すんのはやめれや?

 あとあれです。差別ってのは結局差別を利用しようとしてる奴が広めてる場合があるんじゃないかと。差別の話を聞いて始めてそういう差別があることを知り、その結果差別を行ってしまう事だってある。いや、これは上記と矛盾する話なんですがね、まぁ、喧伝するこっちゃあないだろうと。桜の国では、広島だからと言う事で結婚を云々というくだんがありますが、敦賀だからって話もあるとか。こっちじゃあ聴いた事ないんですが、こないだネットで観まして。そうなると、あれですね。東海村近辺だからとか、狭山だからとか。そもそも東京だって大気汚染がひどいんだから同じじゃあないか?パイロットは通常宇宙放射線の影響を強く受けてるのにもかかわらずモテマスなぁ。アテンダントも。高圧電線もやばいんだっけ?あー、携帯電波もか。そうしたら、東京タワーの周辺なんかもっとひどいことになるよな?
 結局は、何か一つ他の物と違う物を拾い上げてそこを突付きたがると言う話だろうなぁ、と。
 小学生か?まったく。