折りたたみテーブル

 TVでは、ニュース番組と評すべきかワイドショーと評すべきか、微妙な番組が流れていた。俺は、何の気なしにそのめまぐるしく変わる映像を眺めていた。水緒もまたつまらなさそうにそれを眺めていた。
「お茶、コーヒー?」
 水緒はTVに視線を置いたまま言った。
「冷蔵庫のサイダー」
「それはお風呂上り」
 水緒は頬杖をついたまま。
「んじゃー、紅茶」
「ん」
 水緒が台所へと向かった。あー、そういえば水緒がお茶を入れるって言い出したの初めてだ。俺は妙な気分だった。
「紅茶、どこ?」
「あー、ないや」
 俺がそう答えると、水緒は呆れたように言った。
「じゃあ、サイダーね」
 500mlペットから二つのコップに注がれたサイダーはすでに物足りない量になっていたし、さらに悪い事は水緒が食器棚に隠してあったポテトチップスを見つけたことだった。水緒がその袋を豪快に開ける。
「パーティー開けかよ?」
「食べちゃうでしょ?」
 水緒の視線はすでにTVに向かっていた。
 パリッという軽快な歯ざわり。水緒は左手で頬杖をつくと右親指と人差し指だけでポテトチップスを口へと運んだ。ポリ、パリ、パリという音がコメンテーターの声に混じる。
「いい仕事よね?」
「なにが?」
「だって、ほら。他人に難癖つけてれば食べれるんだから」
「身も蓋もないな」
 俺はサイダーを一口、飲んだ。やはり圧倒的に足りない。
「俺の計算では一人当たり500は要ると思うんだよ?」
「太るよ?」
 何をいまさら悩む事か。俺はそう思いながら席を立った。