水緒のいる風景

ラジオを聴きながら

俺はいつものようにパソコンの前に座っていた。水緒は水緒で俺の本を引っ張り出してきては読んでいた。TVはしばらくつけていなかった。いい加減ワイドショーには飽きていた。だからといって何もないのは寂しかったし、沈黙の中キーを叩く音とページがめく…

折りたたみテーブル

TVでは、ニュース番組と評すべきかワイドショーと評すべきか、微妙な番組が流れていた。俺は、何の気なしにそのめまぐるしく変わる映像を眺めていた。水緒もまたつまらなさそうにそれを眺めていた。 「お茶、コーヒー?」 水緒はTVに視線を置いたまま言…

職安の帰り道

何してんだ、俺。 職安の帰り道、本屋で暇をつぶしていた水緒と落ちあって蕎麦を食べている。 いや、その状況はわかるんだけれども、なんで俺はこいつと一緒に蕎麦を食っているのか。自分でも不思議でしょうがなかった。 「うまいか?」 「うん」 水緒はおろ…

正しいバナナの食べ方

「ただいま、ハンバーガー買ってきたぞ」 「待ってたよー」 ハンバーガーを手に帰り着くと水緒はいそいそとお茶の用意をし始めた。インスタントコーヒーを入れ、折りたたみテーブルを出す。俺はテーブルの上にハンバーガーの入った袋を置くと、服を脱いだ。…

いん・まい・るーむ 〜2〜

東尋坊から雄島までは遊歩道が整備されていた。松の並木で昼なお暗い。人気の無い遊歩道はあまり楽しいものでもないな、などとボンヤリ考えていると、茂みの向こうに何かが見えた。なんだろう、俺はその方向に歩を進め、そして隠れた。いるもんだなぁ、と言…

いん・まい・るーむ

ネットをしながらせんべいをかじる。いい加減のどが渇く。冷蔵庫の中のサイダー、俺はそのはじける喉ごしを思い出し席を立った。 「あ、私コーヒーね」 「はい?」 居間のど真ん中。枕を抱えるように寝そべっていた水緒は目線をマンガに落としたまま当然のよ…