まったく何をしているんだか。
ぼんやり本を眺めながら考える。目は字を追ってはいるが、その内容は意識の方には流れてこない。もっとその奥底の方に投げ込んでいるような気分。
朝方ひねった左足首は少し痛みも激しくなって、今日は風呂には入れないな、と思いつつ横になったのは11時。気が付くと18時。
今日は実家に行ってこの先の話をするつもりだったのだけれども、足が痛いので取りやめ。電話で父親と話す。
「足をひねったんで今日は行きません。今週中には顔を出します」
「ひねったって、会社でか?」
会社にはもう40日も行っていません。そしてもう一ヶ月は行かないつもりです。
「いんや、朝方アパートの階段で」
「医者に行って来いよ」
「ひどくなったらね。様子を見て明日にでも行くよ」
「無理はするなよ」
無理をして来てこうなったんだったなぁ、等とボンヤリ。
じんわりとした痛みと自分の体臭が嫌になって何もする気になれない。ダメ無職。無職じゃないけど、ダメには違いないなぁ、と。
暗闇の向こうにあったのは奈落では無くてもう一段の階段。
いっそ奈落だったら楽だったろうな、とも。そうなったら嫁はどうなるんだろう?実家に帰る事になるのか。子どもがいないことがせめてもの、だけれども彼女にとってそれは幸せなんだろうか?ちょっと確信が持てない。東京の連中には連絡は行かないだろうし、まぁ、ネットの知り合いは『最近見ないね?』で済むだろう。
つまりは私は彼女を生かすために今ここに存在しているだけに過ぎないのだろう、と。ならば多少の事は目を瞑ろう。好き勝手もさせてもらっているが、幸福ではないなぁ、とも思いつつ。
何かを為さずに死ねるかよ。そんな言葉が頭に浮かぶ。だからと言って今手は無いのだけれども。
2月になったら部長から電話がかかってくるのかな。会社に行った方が精神的には楽だろう、とも思う。ただ、行ければの話だけれども。
ならば切ってしまえば良いのか?実家にはどう説明しようか。
何もかもが面倒に思える。
酒を飲むとひどい事になるのはわかっている。だから飲めない。何かうまい物を食べに行こうと思っても、何も思いつかない。そもそも足が痛い。
やっぱり面倒だ。何もかもが面倒だな、と思う。
確認はしていないが、たぶん窓の外は雪だ。億劫だ。すべてが億劫だ。
いや、ただ単に臆病なだけなのかも知れないのだけれども。
進むべき道はおぼろげながら見えた。ただ、二つある。とても不安定な道とやはり不確実な道と。振り出しに戻る事は出来ないのだし、サラリーマンで居続ける事はもう無理だし。
夢を見たのを思い出す。今から大学院に言って来いと言われる夢だった。5年前なら喜んだろう。どうせやるなら文学部の通信講座にしませんか、と聞いていた。相手は父親だったろうか?
中途半端だったな、と思う。そんな事は知ってる。その付けをボチボチと払い続けている。そんな所だろうと思う。