ボンヤリとセリフなどが頭に浮かぶ。

「では聞くが、もしもお前朝の駅のホームでかわいい女子校生からラブレターなんぞをもらったらどうする?」
 青年はしばらく虚空を見上げ、そして目線を班長に戻し答えた。
「まずは周囲に隠れて笑っている奴がいないか探します。で、そう言った類の人間がいなければ手近なビルからカメラが狙ってるんではないかと疑います。何も発見できなかった時は、その少女に何の事情でこんな事をするのかと問いただします」
 班長は呆れて尋ねた。
「お前、女の子と付き合った経験は?」
「あればこんな所にゃいませんよ」
 それもそうだな、と班長は笑った。窓の外は北陸の冬には珍しいすがすがしい青空だった。気温もそれほど低くない。壁に貼られたカレンダーは今日が日曜日であることを示していた。班長は青年の為に何かしてやるべきではないかと思った。しかし、何をしてやればよいのだろう?班長が様々に思い悩んでいると、青年は言った。
「そろそろ実験に戻りたいのですが?」
「あ、あぁ」
 青年はそして丸い背中で研究室を出て行った。まぁ、何をしてやることも出来んか。せめて考課表ぐらいは良くしておいてやろう。そこまで考えて班長は思い出した事があった。そういえば、あいつ今何の実験しているんだったっけ?とりあえず話はそれを見てからだな。班長は椅子にかけてあった作業着に袖を通すと研究室を後にした。


 別段、何か目的があるわけではないんですが、まぁ、こんな感じかなぁ、と。