父親との雑談

「わしは小遣いなんてもろた事が無い」
 と言い張る父。
「いや、いつも不思議なんやけどさ。その酒とタバコの代金はどうなるんやの」
 そう尋ねた私に父親は一言。
「おまえ、わしに飯を食うなって言うのか」
 そうかそうか、そういえば昔から不思議だったんだよなぁ。それは食事なのですね、と。食費なら小遣いとは別枠ですね。うちの父、酒とタバコ以外は魚程度しか口にしていなかった訳で。確かにモンゴルの遊牧民は乳しか飲まないという話を聞いたことはあるけど、そうなのかぁ、と。うちの父はつまり、日本酒とタバコのタール及びニコチン、それと微量の動物性たんぱく質から自分の身体を構成していたと言う事で。その魚も大抵の場合知り合いの魚屋から取って来るようなもので、確かに小遣いは要らないわな、と。最も、必要な時は別の方法で金を用立ててた様なのですが、それは流れ板ならでわのきな臭い話なのであまり表沙汰にすべきではないのだろうと。

 10,000円のキャッシュバックで10万円の仕入れを言い値で買ってもらうのと、10万円の値段の商品を9万にまけろと言われるのと、どっちがきついかといえば後者に違いない訳で。1万円の接待をして売った商品が6千円だったってネタもありますしね。どれもこれも嫌な話だなぁ、と。

 大量仕入れの強みは価格決定権を取れるという点で。だからと言って法外な値段を吹っ掛けられたら降りるのが商売だと思うですが、世の中そうでも無いようで。のれん代?馬鹿ではないかと。あそこでこの値段なんならうちもこっちもそうしろやと叩かれるだけで。

 値段は、一度下げると上げる事は出来なくなる。そんな理屈もわかりませんかと。マックのハンバーガーは80円の価値しかないと一旦市場に認知されてしまうと、100円に戻す事は不可能。セットメニューでお客さんは頼むから儲けは出る?客は安いものしか買わなくなるんですよ?マックで80円バーガーを2個買ってスーパーで58円のコーラを買うんですよ?ポテト?そんなものに何か意味があるんですか?ご飯を食べる時には汁物と漬物をという文化を壊したのは給食じゃないですか?そういう世界を作り出しておいて、何を世迷いごとを。


 最近のお店はコンセプトが昭和30年代らしく、団塊世代をターゲット?団塊ジュニアも懐かしいと言う事でしょうか?最近出来たその手の呑み屋の外看を見ていて確かに安いと印象は受けるんですが、仕入れや客単価計算をしてみると……、
「父ちゃん、あれ、焼き鳥屋よりも高くつかんか?」
「高くつくやろうな」
 実際は飲み物を絞っているので客単価はそれほど高くもなりようが無く。精々2,000円かなぁ、と。(焼き鳥屋ならば25くらい?)2,000円で飲める店ってのは確かに嬉しいかもしれませんが、問題はそこに行くにはやはり2,000円ほどの交通費がかかる罠。そのあたりをどうクリアするつもりか、しばらくは様子見。 
「そういえば、国産ウイスキーはトリスのみだったよ」
 指折り数える父親。
「ショット、ロック、水割り、ハイボール。お湯割ってのもありだろうけど、トリスのハイボールは旨いぞ」
「学生時代トリスばっかだから知ってる」
「癖が無くていいんだよな、あれは」
「確かに」
 ただ、ロックで飲むんだったらニッカの方が旨かろうと。

 明日は父親と同行。ているこんちぇると(仮)さんの所のタロット占いでは法王の逆位置が。あんまり幸先は良くねーなぁ、と。