井戸。

 子どもの頃から思っていた事なのですが、『利益』ってのは何かから汲みあげるもんなんだろうな、という風に思っていたり。その頃は『第三世界から資源を買い、それを加工する事で工賃をもらう』〜利益発生と考えていたのですが、これはどちらかというと井戸と言うより福井の繊維産業の姿だったんだろうな、と。福井の機屋さんの多くは発注先から糸を預かり、それを織って布にする事でその工賃を貰うという『加工業』だったそうで、多分私はそれから連想していたんだろうと。
 閑話休題
 んで、今は流石に『第三世界から先進国は利益を吸い上げている』という発想はアレかなと思っているのですが、では現在日本経済は何から利益を吸い上げているんかなぁ、と考えた所……多分未来からなんだろうなぁ、と。
 と言いますのは、現在製造業のほとんどは正社員を持たず派遣社員や製造請負でそのラインを動かしている訳で。もちろん先端な世界では無人化なんかも進んでおり、そこで使われる金型やシステム維持に正社員が投入されてるのは知ってますが、まぁ、こう求人票なんぞを見ていると大抵の場合が派遣・請負なんじゃないかと。んで、それでもおっつかない場合は日系ブラジル人やブラジル人、中国からの技術『研修生』を投入する。……良いか悪いかは知りませんが、とりあえず現状の製造現場ってのはそうなっているように見えるのです。

 んで、今年から正規雇用が改善しましたわな。
 団塊の世代の大量定年を迎え、会社は危機感を持った。技術が失われるんじゃないか、働いてくれる人がいなくなるんじゃないか、と。この先少子化が進んで行く訳で、世に出る『新社会人』はますます減って行く状況下、誰しもが大学に入る事が出来る時代が来るが如く、誰しもが正社員になれる時代がやはりやってくるんだろうと思うのです。

 ならその時、現場は誰が回すのでしょう?

 団塊ジュニアと呼ばれるバブル崩壊前後に社会人になった人間はその頃多分40歳ぐらいです。
 で、大抵の派遣会社は35で年齢を切ってますやね。

 多分、派遣会社が人を集められなくなるだろうと。
 もちろん、正社員にならない人口はなおも残るとは思うのですが、絶対数が減りとても需要に追いつかなくなるだろうと。

 無人化だけでやってくんですかね?
 それとも制限を撤廃するのか?
 中国進出を推進する?労働賃金が高くなればベトナムやインドへ?いっそサマワへ行け。

 単純労働の派遣社員の年収は300万程度と言われています。実際私の手取りから考えるとそんなもんだろうな、とは思うのですが、それが個人消費に影響を与えると国も危惧しています、が、会社は『正社員にならない人間が多いのは良くないと思うが、わが社は正社員を雇う予定はない』と言うところが多い様子。
 フランスの若者のように、我々も派遣法改正時に暴動でも起こすべきだったんじゃないかとは思うんですが、まぁ、でも派遣社員になると言うのは会社の信用で収入を得る事が出来るので、ある意味セーフティ・ネットの様な物にも見えなくもないのですよね。

 ただ、まちがいなく中流はいなくなる訳で。
 で、ホンの一握りの高所得者というのも、市場と言う井戸から利益を稼げない……つまりは彼らも稼げなくなるんだろうな、と思うのです。
 で、今日本経済が得ている利益は多分その未来から汲み上げている。そう、赤字国債を乱発したように。事態は改善する。景気は良くなると自分を騙しながら。

 はてさて、どうなるんでしょうなぁ。今倉庫の片隅で思うのはそんな事です。