(雑記・mixiより転載)ユッケでの食中毒事件に関して その2

集団食中毒、「ユッケ用」業者が勧める
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20110502-00000020-jnn-soci

 今回の事件でお亡くなりになったお子さんについては哀悼の意を表したいと思います。が、子どもに生肉を食べさせるべきではない事はもっと知られるべきだと思います。

 色々日記やTwitter上での発言、はてななどを見ていますと『生食用ではない肉を提供した非道会社』というお話があるのですけれど、繰り返して申し上げます。

 我が国において、生食用に提供される牛肉と言うものは存在しません。
 ですので、全ての生肉は汚染されていると判断し、それでもなお生で食べる場合は自己責任で召し上がってください。そしてその肉を免疫が未熟なお子様に食べさせる事は絶対に避けてください。


 我が国において生食用牛肉というものは供給された事がありません。 
 これは、と殺場から食肉加工工場までの行程が評価対象になると思うのですが、その各行程において食中毒に関わる菌やウイルス、寄生虫などに肉が汚染されない機会と言うものがほとんどないからです。
 ちょっと想像していただきたいのですが、私ら人間にしても牛さん豚さんにしても腸内にはものすごい数の細菌を持っています。牛さんなんかは胃にも飼ってますよね? セルロース分解菌なんかを。
 で、生食という事になれば一般生菌数(食中毒菌だろうが乳酸菌だろうがともかく全ての菌の数)は10の3乗とかそういうオーダーを下回っていなければならないでしょう。……スーパーなんかで販売されているサラダなどは10の6乗あたりがリミットな筈。これは野菜が土壌細菌に汚染されている事に由来します。その為デリカなどで使用される野菜は酸性水だの次亜塩素酸Naだので処理されるのが一般的で、その後流水でガンガン洗ったとしてもやっぱり野菜には10の3乗くらいは菌が残ります。って、それくらいまで落とせたらすげーと言うレベル。因みに一般生菌数の検定上の下限は300以下……10の2乗という事になります。完全滅菌された食材でも、検査データとしては300以下という表記になるんですね。

 牛肉と言うのは基本的に熟成して食べるもの。と殺を行ってから1〜2週間しないと肉の旨味と言うものは出てきません。当然その間には肉に付着していた菌と言うものは肉の表面でわさわさ繁殖して行く訳です。……それも肉の旨味を引き出す一因になってるわけですけどもね。時々『表面にカビの生えた肉の塊』というのがテレビなんかで紹介されたりしません? あれです。肉はその細胞内に自己消化酵素なんかも持っていますので、細胞死が起きた後、筋肉組織を構成するタンパク質などがアミノ酸やペプチド(アミノ酸がいくつかつながった分子)に分解されていくのですが、これを私たちは舌の上で旨味と感じるんですね。
 
 んでま、牛肉というものは基本的にそうやって流通して行くもので、基本的に生食には適さない食材なのです。が、例えば生レバーなどはと殺後すぐに流通に乗せられたレバーが焼肉屋さんの判断でレバ刺しとして提供されます。厳密に言えばこれは厚労省の基準違反なのです。なにせ国内には生食用肉や臓物を提供すると殺場・加工施設は存在しないので。……先出の東京都のサイトでは馬肉と馬レバーについては生食への加工が出来る工場が存在すると言う事でしたね、そういえば。
 で、肉はどうかといえば、と殺されて解体されて枝肉として市場に出るのですけれども、この過程で熟成が行われたりしてある程度の日にちがかかるものと判断すべきであると私は考えます。……レバーやモツなんかは『殺されたて』というものが流通している事はあるんですけれども、そのあたりの話をし始めますと色々ややこしい問題に足を踏み入れなければならなくなるのでここでは割愛したいとも思います。ただ、これだけは申し上げます。既得権益だの利権だのと仰いますが、彼らにそれを与えたのはその行為を忌み嫌い押し付けた私らのご先祖様ですから、それを彼らが保有している事を特権と批判するのは筋違いだと思うのです。


 ともかくも、世間に存在する肉は基本的に汚染されていると考えるべきです。
 ですので、これらの肉をまだ腸管免疫が未熟なお子さまに食べさせるのは絶対にやめてください。
 更に申し上げるには、大規模展開をしているようなチェーン店で生肉を食べる事は避けた方が賢明です。安価な生肉も同様。安い事には『訳』があります。

 個人的には、どうしても生レバーやユッケなどをお召し上がりになりたいのであれば、その道でそれなりの年月を暮らしてきた料理人/マスターがおられるお店で召し上がる方がよろしいかと思います。