中篇

宇宙戦争 #9

「で、どう思う?」 横河はCDCの艦長コンソールから会議出席者達に呼びかけた。ディスプレイには観測長と機関長、オブザーバーとして参加している航行長と航宙長の顔が表示されていた。彼らの表情は一様に曇っていた。 「一ヶ月で観測に機関、砲雷までや…

宇宙戦争 #7

「ちょっと大人気なくない?」 土屋は艦長室に横河を呼び出した。 「衆人環視の中、候補生に恥をかかせた事ですか?」 横河は土屋の指し示したソファに腰掛けながら答えた。土屋は執務机のコンソールで何か見ていた。視線はディスプレイに注がれていた。 「…

宇宙戦争 #7

翌朝。 水元は朝食の為に食堂へと向かった。自動給食器の前に立ち何を食べようかと悩んでいると突然後ろから声をかけられ、その隙に和定食を選ばれた。 「何て事をするんです!大人気ないですよ、渡辺さん」 「おいまて、人に罪をなすりつけるな」 振り返る…

宇宙戦争 #6

「CDCより艦橋、艦勢制御を返します」 「艦橋、了解」 春菜に中本が答えた。 「戦闘の可能性があったんですか?」 水元は中本に尋ねた。艦勢制御……艦の姿勢を制御する権限をCDCが要求するというのは軸線砲を使用する可能性があるという事を宣言してい…

宇宙戦争(仮)#5

「総員に通達、本船は1200に『ルナティックドライブ』に入る。終了後、船長より全員に対し今回の本船任務等についての訓示がある。直員は配置のまま、待機中の各員も所定配置にて聞くように」 横河の放送を水元は食堂で昼食を食べながら聞いた。時計は1150、…

宇宙戦争(仮)#4

艦長室と書かれたプレートを見上げ、中本は小さくため息をついた。そして再び笑顔に戻るとそのドアを3回ノックした。 「どうぞ」 中から弾むような返事が帰ってきた。『失礼します』中本はドアのコンソールに人差し指を当てドアを開けた。艦長室と言っても…

宇宙戦争(仮)#3

水元が着任してから3日後『わかな』に船長が帰着した。その間にも幾人もの要員が乗船たが、その面々は誰もおよそ航路保安任務には関わりのないような人間ばかりだった。 特務船『わかな』もそもそもは楠級改という艦級に分類される駆逐艦であり旧式駆逐艦が…

宇宙戦争(仮) #2ブリッジにて

水元はものすごい勢いで通路を突き進んでいく春菜に追いつくのがやっとで、艦橋に辿り着いた時には息が上がっていた。 「坂本航法長、『候補生』さんをお連れしました」 息を整えながら姿勢を正す水元見た坂本はクスリと笑って右手を差し出した。 「ようこそ…

宇宙戦争(仮)#1

「『さみだれ』通信途絶、第17護衛群壊滅!」 通信士の悲鳴にも似た絶叫がCDCに響く。それは日本連邦宇宙軍創設以来初めての艦隊戦だった。 「敵性物体、A、高速移動物体を分離。3体、観測室より映像、スクリーンに出します」 事務的なオペレータの声…