習作

宇宙戦争モノ

敵母艦は4隻。その搭載するゴーレムはおよそ8機。対する『わかば』のMTUは1機のみ。もちろん『わかば』の近接防衛システムは全稼働状態ではあるが、どう考えても不利だった。ここまでだな。高松は思った。そして艦内放送を起動した。 『総員退艦準備。…

宇宙戦争モノ

日本連邦宇宙軍・高松一佐はその日、日本連邦の名目上の首都・日本州へと来ていた。高松が地球へ来たのはこれが2回目だった。一度目は宇宙軍の初任訓練航行の時だったからその時は軌道上から日本列島を眺めただけだった。もっとも、当時の高松は日本列島より…

はるか計画設定部

4畳半ほどの研究室。男は窓に向かって置かれたデスクで山積みになった本や書類に囲まれながらPCの画面を睨んでいた。時折老眼鏡をずらし、書類を眺め、また画面に向かう。 ノックが響く。男は視線をそらさず『開いてるよ』とぼっきらぼうに言った。入って…

戦車戦

「各車、カクカク。突撃。突撃」 中隊系無線、インカムを車内通話に切り替える。 「突撃」 エンジンがうなる。ペリスコープで周囲を確認する。まさかこんな所で戦車どうし殴りあうとはお互い思ってもいなかっただろう。 「そういや、ここらは転作してたよな…

宇宙戦争モノ

日本連邦宇宙軍・第2方面隊 駆逐艦『わかな』 艦長室というものはいつの時代でもそれなりの空間を確保されている。それは空間利用に厳しい制約がある宇宙艦艇でも同じだった。なぜならばそこはその艦長たるものの権力の象徴であったし、艦内で老練な下士官で…

ある女性航空士官の手記から

馬鹿じゃないかと思った。 翼の下にはどうやってつけたのかと思うほど大量の爆弾がぶら下がってたし、機体のお腹の所には対地ミサイルがびっしりと並んでいた。これは私のバンビちゃんじゃない。 「まるで攻撃機みたいですね」 そう言うと機付長は困ったよう…

宇宙戦争モノ

日本連邦宇宙軍・第3護衛群 巡宙艦『ひえい』 それは、定期パトロールの一環に過ぎなかった。 宇宙戦争というものが遠く過去となった世紀の夢物語だとされていた昨今、彼らの任務は航路保安局の艦艇では調査が困難と思われるような地域……例えば小惑星帯や他…

夏の日の一シーン

足羽山の茶屋。店を切り盛りする老婆が一人、他に客はいなかった。よしずの向こう、子供たちが走っていく。その影は濃い。せみの鳴き声。通り抜けていく風。私は思わずネクタイを緩めた。茶屋の中は薄っすらとした明るさ。何も見えないほどの暗さではないが…